歯車とは?種類・各部名称・計算式をわかりやすく解説

目次
歯車は、時計やエレベーターの昇降機、自動車の内部機構など、日常のさまざまな場所で使われています。その歴史は長く、過去から現在に至るまで発展し続け、私たちの生活になくてはならない存在となっています。
歯車にはひとつひとつに個性があり、幅広い用途をもちます。私たちの発想力と組み合わせ次第で、自由自在な動力伝達を可能にします。
本記事では、歯車とは何かという基本から、歴史、各部の名称、計算式、種類や用途、加工・製造方法までを解説します。
歯車とは
歯車とは、円盤や円筒の周囲に歯形を付け、その噛み合わせによって動力伝達をおこなう機械要素です。英語では「ギヤ(gear)」と呼ばれます。
日本産業規格(JIS)では、「歯を順次かみ合わせることによって,運動を他に伝える,又は運動を他から受け取るように設計された歯を設けた部品」と定義されています。
2つの歯車のうち、歯数が小さい方の歯車を「小歯車(ピニオン)」、歯数が多い方の歯車を「大歯車(ホイール or ギヤ)」と呼びます。また、一方の歯車から見た他方の歯車のことを「相手歯車」と呼びます。
歯車は伝達力が大きいことが特徴です。歯車の形、歯の大きさ、歯の数を変えることで、伝える力の大きさ・方向・回転数や速度を自在に調節できます。
歯車の材質としては、鉄鋼系材料、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム、樹脂などが一般的です。
歯車の歴史と現在
歯車の歴史は古く、古代ギリシャでは、アリストテレスが金属製の歯車を使用していたといわれています。アリストテレスの弟子たちがまとめたとされる『メカニカ(機械学)』に、青銅製や鉄製の歯車の記述があると言われています。
またアルキメデスは、ウォームギヤを用いた巻き上げ機を考案したと伝えられています。
15世紀にはレオナルド・ダ・ヴィンチが、ねじ歯車、傘歯車、ウォームギヤなどの原型のスケッチを残しています。
16世紀になると時計の正確さが求められ、精度を高めるために歯車の研究が一層進みました。18世紀には産業革命が起き、機械工業の発展とともに歯車製造も発展を遂げていきます。
近年ではミクロン単位の精度で歯車を製造できるようになり、ロボットなど高精細な機械にも使われています。それに伴い、さらなる精度・耐久性・効率の高い歯車が求められており、今後も発展していくことが予想されます。
歯車の基礎知識
歯車各部の名称
歯数(z)
歯車を決める要素です。文字どおり歯の数を指します。
圧力角
歯形を決める要素です。歯面の1点において、その半径線と歯形への接線とのなす角度を指します。一般的には20°がよく使われます。
円ピッチ(p)
ピッチ円上に沿った、隣り合う歯との円弧上の長さです。歯と歯の間隔ともいえます。
歯先円
歯の先端を結んだ円(直径部分)を指します。
歯底円
歯の底を結んだ円(直径部分)を指します。
歯溝
歯と歯の間にある谷の部分を指します。
歯厚
ピッチ円上で測った歯の厚みです。実際の測定では「またぎ歯厚」で測るのが一般的です。
歯末のたけ
歯先円半径からピッチ円半径までの部分を指します。
歯元のたけ
ピッチ円半径から歯底円半径までの部分を指します。
全歯たけ
歯末のたけと歯元のたけを合わせた、歯先円から歯底円までの高さを指します。
歯幅
軸方向の歯の長さのことで、歯車部分全体の厚みともいえます。
歯車の寸法
歯車の大きさは、次の3つの指標で表されます。
モジュール(m)
モジュールは歯の大きさを示し、値が大きくなるほど歯も大きくなります。
歯車同士を噛み合わせるには、同じ値のモジュールにする必要があります。また、一部の組み合わせを除き、モジュールが同じであれば歯数が異なる歯車同士でも噛み合います。
基準円直径・モジュール・歯数の関係は次のとおりです。
基準円直径(d) = モジュール(m) × 歯数(z)
(モジュールを求める場合は m = d ÷ z)
ダイヤメトラルピッチ(DP)
ダイヤメトラルピッチとは、歯の大きさをインチ単位で示したものです。1インチは25.4mmにあたります。
ダイヤメトラルピッチ(DP) = 25.4 ÷ モジュール(m)
円ピッチ(p)
円ピッチとは、各部の名称でも説明したとおり、ピッチ円上に沿った隣り合う歯との長さのことです。英語ではサーキュラーピッチとも呼ばれます。
円ピッチ(p) = π × 基準円直径(d) ÷ 歯数(z)
バックラッシ
バックラッシとは、歯車と歯車の間に意図的に作る隙間のことです。歯車をスムーズに回転させるために必要な隙間になります。
ただし、バックラッシが大きすぎると振動や騒音の原因になり、歯車同士にズレも生じやすくなります。逆に小さすぎると摩擦が大きくなり、伝達効率が低下して歯車の寿命も早めてしまうため、適切な隙間を設けることが必要です。
正面噛み合い率
正面噛み合い率とは、歯車対において同時にかみ合っている歯の対の数の平均値です。たとえば噛み合い率1.5とは、1対でかみ合う瞬間と2対でかみ合う瞬間が交互に現れる状態を指します。値が大きいほどスムーズに歯車同士が噛み合い、強度や騒音にも関わります。一般に1.2以上が必要とされ、値が大きいほどなめらかな伝達に有利です。
正面噛み合い率 = 作用線上のかみあい長さ ÷ 法線ピッチ
歯車の高さ
歯車の歯の高さは、並歯・高歯・低歯の3つに分かれます。
- 並歯:標準的な高さで、モジュールの2.25倍の高さになります。
- 高歯:並歯より高いもの。騒音や振動を抑えられる反面、歯の曲げに弱くなります。
- 低歯:並歯より低いもの。歯が折れづらく、伝達効率にも優れています。
潤滑
潤滑とは、歯車の噛み合いをなめらかにするもので、主に潤滑油を用います。潤滑油は長期間の使用などによって劣化するため、定期的なチェックが必要です。
干渉
干渉とは、かみ合っているときに、本来当たってはいけない部分どうしが接触してしまうことです。正常な回転が期待できなくなります。
切り下げ(アンダーカット)
切り下げとは、歯切り加工のときに工具の刃先が被削歯車の歯元を削ってしまう現象です。歯数が少ないときに発生します。歯元が細くなるため、強度が下がります。
歯の摩耗と損傷
摩耗
摩耗とは、噛み合った歯車同士が削り合い、正常な噛み合いができなくなる状態のことです。
ただし、運転開始直後にお互いがなじむように小さく削り合う「なじみ摩耗」というものもあり、こちらは噛み合いに大きな影響はありません。
摩耗が起きると振動や騒音の原因になり、バックラッシが大きくなる、歯車機構の温度が上昇するといったことも起きます。これらは歯車の強度不足、組み立ての不備、潤滑油不足などにより発生します。
折損(せっそん)
折損とは、歯車が折れてしまうことです。原因として、連続的な過大負荷、強い衝撃、繰り返しの使用、摩耗の進行が挙げられます。
塑性変形
塑性変形とは、歯車に強い力が加わった際に変形し、もとの形に戻らない状態のことです。
ピッチング
ピッチングとは、歯車の噛み合いが繰り返されることで表面が疲労し、剥がれてしまうことです。
スコーリング
スコーリングとは、潤滑油不足によって歯面の局部的な融着が生じ、歯先と歯元にひっかき傷ができることです。防ぐには、潤滑油を増やす、あるいは粘度の高い潤滑油を使用することが有効です。
歯車の軸の種類
歯車には、軸の交わり方による分類があります。
平行軸
2つの歯車の軸が平行になっている歯車で、もっとも基本的な歯車です。
歯車の例:平歯車(スパーギヤ)/はすば歯車(ヘリカルギヤ)/内歯車(インターナルギヤ)/ラックギヤ・はすばラックギヤ
交差軸
2つの歯車の軸が平行ではなく交わる歯車で、出力する回転運動の方向を変える場合に使用します。
歯車の例:直歯傘歯車(ストレートベベルギヤ)/曲り歯傘歯車(スパイラルベベルギヤ)
食い違い軸
2つの歯車の軸が平行でも交わりもしない、軸間に動力を伝える歯車です。減速比を大きく得られるのが特徴です。
歯車の例:ねじ歯車/ウォームギヤ/ハイポイドギヤ
歯車の形状
歯車の歯形は、大きく2つに分類できます。
インボリュート歯形
インボリュート曲線と呼ばれる形状を用いた歯形です。円板に糸を巻き付け、たるまないように展開したときの糸の先端が描く軌跡にあたります。
歯車の中心距離に誤差があっても正しい回転精度や噛み合いが維持され、なめらかな噛み合いが可能です。形状がシンプルで加工しやすい点も長所で、多くの歯車でインボリュート歯形が採用されています。
サイクロイド歯形
サイクロイド曲線と呼ばれる形状を用いた歯形です。直線の上を円が転がった際に、円のある1点が描く軌跡にあたります。
歯元の面積が広いため、インボリュート歯形より強度が高いことが特徴です。理論どおりの歯形であれば干渉が起きないことも長所です。反面、中心距離に誤差があると回転精度や噛み合いに影響が出るため、中心距離を正確にする必要があります。加工が難しく、時計などの精密機器に用いられることが多い歯形です。
歯車の種類
平歯車(スパーギヤ)
産業で幅広く使われる、動力伝達の代表的な歯車です。平行な2つの軸に使用され、歯数によって回転数が変化し、一方の軸からもう一方の軸へ回転運動を伝えます。
スラスト荷重(軸方向の力)が生じないため扱いやすく、生産性や精度にも優れています。総じてコストパフォーマンスが高い歯車です。
はすば歯車(ヘリカルギヤ)
平歯車の歯すじが、軸に対して斜めにねじれている(つる巻き線状の)歯車です。
平歯車よりも強度が高く、歯の噛み合いがなめらかで静粛性が高いことが特徴です。低振動・低騒音である一方、スラスト荷重が生じる点が短所になります。
ウォームギヤ(ウォーム・ウォームホイール)
円筒に螺旋状の歯で構成されたねじ状の歯車「ウォーム」と、それに直角に噛み合う「ウォームホイール」の組み合わせです。2つの回転軸が交わらず、直交する軸の動力伝達に使用されます。
ウォームが入力側、ウォームホイールが出力側となり、減速比を大きく取れ、静粛性が高く、動作がなめらかです。ただし、伝達効率が低いことや、歯の接触面が大きく熱が発生しやすいことが短所です。
傘歯車(ベベルギヤ)
傘のような円錐形の見た目をもつ歯車です。自動車や工作機械、ロボットなどで、回転軸の向きを変える場合に使われます。強度と動力伝達効率に優れています。
傘歯車には、噛み合う歯すじが直線であるストレートベベルギヤや、ピッチ円錐上で曲線の歯すじをもつスパイラルベベルギヤなどがあります。
内歯車(インターナルギヤ)
円の内側に歯をもつ構造の歯車です。これに対し、平歯車などの円の外側に歯が付いているものを「外歯車」と呼びます。
自動車のエンジンやモーターの減速機構として使われる「遊星歯車装置」で多く使用されます。外歯車を中に入れて使うため、内歯車同士では使用せず、必ず外歯車とセットになります。
外歯車同士では回転を伝える方向が反対になるところ、内歯車を使うと同じ方向に回転を伝えられます。
ねじ歯車(スパイラルギヤ)
歯すじが軸に対して斜めにねじれており、「食い違い軸」の動力伝達に使用される歯車です。
負荷があまりかからない場合の減速機構や、動力の方向を変えたい場合に使用します。反対に、大きく負荷がかかる箇所や振動の強い箇所では歯の噛み合いがなめらかにならないため、大きな動力の伝達には向きません。
ラックギヤ・はすばラックギヤ
ピニオンギヤとの組み合わせで主に使われる、歯車の直径が無限大の棒状あるいは板状の歯車です。動力伝達、自動車のステアリング機構、工作機械、輸送機械など、多様な分野で使われます。
ラックギヤとピニオンギヤを組み合わせることで、回転運動と直線運動を相互に変換できます。
平歯車と噛み合う歯すじのものは「すぐば(直歯)ラックギヤ」、はすば歯車と噛み合う歯すじのものは「はすば(斜歯)ラックギヤ」になります。
歯車の用途
歯車の主な用途は、機械などの動力の伝達です。
形状や歯数、ピッチを調整することで自由に動力を伝達でき、汎用性や応用性が高いといえます。同時に緻密な作りであるため、ひとつでも歯車に不備があるとうまく動かなくなることもあります。
歯車ひとつひとつの耐久性や精度にくわえ、小型・軽量であるかどうかも重要なポイントです。
歯車が使用されているものの例:
- ラジコン
- カメラの三脚
- 顕微鏡
- コーヒーミル
- ハンドミキサー
- 手回し発電ライト
- 時計
- オルゴール
- エレベーターの昇降機
- 自動車内部機構
このほかにも、航空機や医療機器、ロボット、工作機械などにも使用されており、産業において幅広く活躍しています。
歯車製造の流れ
ここでは歯車製造の流れの一例を紹介します。
旋盤加工
はじめに、材料を回転させ、切削工具を当てて歯車の内外径を加工します。回転させて加工するため、歯車のような円筒形の加工に適しています。鉄や樹脂、ステンレスといった多様な素材に対応できます。
ホブ盤加工
ホブカッターと呼ばれる刃を回転させる工作機械がホブ盤です。ホブ盤を用いて歯すじの加工をおこないます。主に平歯車、はすば歯車、ウォームギヤの加工で使用されます。
焼き入れ
加工が終わったら、高温に加熱したあと急速冷却をする焼き入れをおこない、歯車の強度を高めます。焼き入れ後は、再度加熱して適切な速度で冷却する焼き戻しもおこないます。
研削
最後に研削盤を用いて歯面を仕上げ、歯車を整えます。研削では歯面の粗さを軽減し、誤差をなくしていくことで歯車の精度を高めます。
歯車製造方法の種類
歯切り加工には、創成法と成形法の2つが一般的です。
創成法
創成法は、断面がラック形の工具を押し当て、歯車の周囲から少しずつ削って成形していく手法です。
成形法
成形法は、歯車の溝と同じ形状をした切削工具を用いて、歯を1つずつ成形していく手法です。
前田精密製作所の歯車製作(各種特注品・オーダーメイド歯車)
前田精密製作所は1901年に創業し、情報通信関連部品や航空機部品、医療機器部品を中心に、精密機械部品・精密小型歯車の製造を手掛けています。
高品質の精密機械部品を取り扱うからこそ品質保証を大切にしており、品質マネジメントシステムに関する規格として、航空・宇宙分野のJIS Q 9100と、医療機器に関するISO 13485を取得しています。
製作実績
精密小型部品や小型歯車をはじめ、医療機器部品・手術用器具、農業用アシスト機器、ロボットハンドなど、実績は多岐にわたります。
- 波動歯車減速機(外径6mm)
- 小型歯車・マイクロギヤ
- 可撓式歯車
- 超小型摩擦減速機
- 摩擦減速機
- 減速機試験装置
- 気体軸受
- 薄肉切削加工
- 内視鏡手術用器具
- 整形外科手術用器具
- 人腕インピーダンス計測装置
- ヘッドケアロボット用新規アーム部
- アルミプレート加工
製作設備・対応範囲
- 対応モジュール:m=0.04〜5.0
- 対応サイズ:米粒大のマイクロギヤ〜Φ600
- 歯車の種類:平歯車、はすば歯車、内歯車、傘歯車、ウォーム・ウォームホイール、ラックギヤ など
- 加工方法:ホブ切り、歯車形削り、ウォーム切削、ラック切削、フライス加工、研削、放電加工、ワイヤ放電加工
- 材質:炭素鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス、真鍮、アルミ、チタン、モリブデン、樹脂(エンジニアリングプラスチック)など
- 検査:歯車測定機(歯形・歯すじ・ピッチ測定機)、歯厚測定、ピン測定、マスターギヤ噛合試験
歯車・歯車機構の購入・見積について
各種特注品・オーダーメイド歯車を製作いたします。以下よりお問い合わせ・見積依頼をお願いいたします。
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